浦和地方裁判所 昭和63年(わ)559号 判決 1988年10月21日
本店所在地
埼玉県新座市あたご二丁目四番二〇号
有限会社キヨセ産業
右代表者代表取締役
大熊巖
本籍
埼玉県新座市西堀三丁目二〇五番地の二
住居
同市西堀三丁目一二番三号
会社役員
大熊巖
大正一〇年一〇月一六日生
右被告人両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官伊藤厚出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人有限会社キヨセ産業を罰金二〇〇〇万円に、被告人大熊巖を懲役一〇月に各処する。
被告人大熊巖に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪隣るべき事実)
被告人有限会社キヨセ産業は、埼玉県新座市あたご二丁目四番二〇号に本店を置き、パチンコ店、ボウリング場など遊技場の経営等を営業目的とする資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人大熊巖は、被告人会社の代表取締役として、その業務全般を統轄していたものであるが、被告人大熊は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、パチンコ店売上げの一部を除外し、土地の売却価額を実際価額より低く仮装するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和五八年一一月一日から同五九年一〇月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が六九七八万八五八一円であったにもかかわらず、同六〇年一月四日、同県浦和市常盤四丁目一一番一九号所在の所轄浦和税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三二八八万九〇一円で、これに対する法人税額が一二〇六万二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の事業年度における正規の法人税額二七九八万九九〇〇円と右申告税額との差額一五九二万九七〇〇円を免れ、
第二 昭和五九年一一月一日から同六〇年一〇月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が四五九三万五六三三円であったにもかかわらず、同六一年一月四日、前記浦和税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九七五万一八一四円で、これに対する法人税額が二八九万九八九万九八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の事業年度における正規の法人税額一八五六万七五〇〇円と右申告税額との差額一五六六万七七〇〇円を免れ、
第三 昭和六〇年一一月一日から同六一年一〇月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億一六〇七万二五六一円であったにもかかわらず、同六二年一月五日、前記浦和税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四七五二万七三四一円で、これに対する法人税額が二三三九万九八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の事業年度における正規の法人税額六七六八万五三〇〇円と右申告税額との差額四四二八万五五〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人大熊巖の当公判廷における供述
一 被告人大熊巖の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書
一 大熊武宣及び森邦昭の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書
一 大熊武宣作成の答申書二通
一 大熊よし江、山本半十郎、池田貞雄(二通)、三角徳治(二通)、三上福三、小島紀三郎、土屋登、大塚節子、山本敏男(三通)、武田近(二通)、大熊民三(二通)、大熊良子(二通)、高橋忠雄、金子ミヨ及び清水敏秀の大蔵事務官に対する各供述調書
一 横田八郎、高橋忠雄(三通)及び橋本朗(六通)作成の各答申書
一 大蔵事務官金山岳及び同太田章作成の各調査書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書、修正貸借対象表及び修正損益計算書各三通
一 浦和税務署長作成の証明書四通
(法令の適用)
被告人有限会社キヨセ産業及び同大熊巖の判示各所為は、法人税法一五九条一項(被告人会社についてはなお同法一六四条一項に該当するところ、被告人会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人大熊については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項によりその罰金額を合算し、被告人大熊については同法四七条本文、一〇条により、犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、その金額及び刑期の範囲内で、被告人有限会社キヨセ産業を罰金二〇〇〇万円に、被告人大熊巖を懲役一〇月に各処し、情状により同法二五条一項を適用して、被告人大熊に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとする。
(量刑の理由)
本件は、被告人大熊が、被告人会社の売上金の一部を除外し、土地の売却価額を実際価額より低く仮装し、これを農業協同組合に開設した多数の架空名義口座に預金するなどの不正な方法で所得を隠匿し、三年間に被告人会社の法人税合計七五八八万二九〇〇円を免れたというものであって、脱税額は多額で、その動機において酌量すべきものはなく、犯行は計画的で、手段、方法も巧妙、悪質であり、被告人両名の刑責は重いというべきである。しかし、その後、右ほ脱額全額を重加算税とともに納付し、反省の情を示していることなどの事情を考慮し、被告人両名を主文掲記の刑に処し、更に被告人大熊に対しては、その刑の執行を猶予することとした。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 和田啓一)